メリーとネズミ
 ある晩、台所の壁を見つめて、小さな犬のメリーが「クーン、クン、クン、キャンキャンキャン」と鳴く。まるで、人恋しげな鳴き方なのであるが、これは、メリーがネズミの気配を感じた時の鳴き方だ。
 すると・・・・出た!
「わ、ネズミだ」
 メリーは激しく、キャンキャンキャンと大騒ぎ。すると、ダンナが、なんと、おたまを手につかみ、ネズミを追って叩く。
 当たった!ネズミ、脳震盪を起こしたらしく、ひっくり返る。ダンナが、それを、床に落とすと、メリーがすかさず噛みついて、頭をブルブル振って、ネズミ、ご臨終。

 日本から来ていた大学生の甥っこが、その一部始終を見て、
「わ、びっくり!わぁ〜、わぁ〜、わぁ〜」
 ダンナが、おたまで、ネズミを叩くのも、小さくてかわいらしい犬のメリーがネズミをくわえて、噛み殺してしまうのも、「わ〜、信じられない!俺、ショックー」 
 そうだろうさ。ラオスの日常は、なかなか、タフなのである。




ペプシとヨーチン
 うちのおばか犬ペプシが、怪我をした。私が外から戻ってくると、ウォォ〜、ウォォォォ〜とペプシのおたけびが聞こえる。大慌てで、家に入ると、窓のサンに脚がひっかかっている。ご本体は、外で宙ぶらりんになっている。窓のサンの隙間から出入りしようとして、引っかかったのだ。これで2回目。大慌てで、外に出て、ペプシを抱き上げて、脚をはずしてやる。鼻にも傷をつけて、なぜか泥だらけ。
 脚は相当痛いようだ。まず、水で洗ってやる。左後ろ脚が痛くて、つけないらしい。歩けない。その後、大きなペプシを抱いて、布の上におろしてやり、脚の傷にヨーチンをつけてやる。ペプシはつらそうに丸くなって、すっかりしょげたように寝ている。
 ダンナが外から戻ってきたので、「大変だったのよ。ペプシが怪我をして、痛くて、歩けない・・・」
 と言って、ふと見ると、ペプシがいない。あれ?なんと、扉があいた途端、外に駆けだして、なんと雌犬を追っかけているじゃないか!
「なんだって?ペプシが歩けない?走ってるじゃん」
 まったく、犬の回復力にはあきれる。


ペプシのお芝居
 夜中に、ペプシのウォウォウォ〜という声が聞こえた。
「えっ?またどこかに引っかかったのだろうか?ばか」
と、大慌て飛び起き、外に出て見る。あの鳴き声は、ペプシがどこかに挟まったり、痛い目にあっている時に出す叫び声である。
 と、大慌てで、声の方に行くと、図書館との間にある金網の扉の向こうで、ペプシとメリーが、嬉しそうに尻尾を振っているではないか。痛い様子なんか全然ない。
「何よ、おまえたち、いつの間に、外に遊びに行ったのよ」
と、私が、金網扉を開けると、2匹が尻尾をふりふり、飛び込んでくる。

 ちぇっ、犬にだまされたか。
 ペプシが賢いんだか、私がバカなんだか、わからない。



 メリーとペプシ